<小市民>シリーズを読んでみました

投稿者: | 2019年3月17日

小市民シリーズ

米澤穂信著。
『氷菓』の<古典部シリーズ>を、アニメから入り、なんとなく楽天のポイントアップのために楽天ブックスで買い物…とか思って全部購入しました。
その勢いで、<小市民>シリーズもまとめて購入です。

ミステリでも人が死ぬ(殺人事件)ようなものではなくて、日常の中にある謎でもあり、気楽に読める…と思ったらちょっと違っていました。
高校生の小鳩 常悟朗(こばと じょうごろう)、小佐内(おさない) ゆき、堂島 健吾(どうじま けんご)の物語。

<古典部>を読んだあとでは、<小市民>のほうはキャラクターが魅力的には感じなかったです。どこにでもいるタイプではないのに、憧れたり感心したりというキャラではなくて、遠巻きに見る分にはいいけれど関わりたい相手ではないという印象です。
頭のいい人、会話が進む人、好き嫌いの感情がはっきりしていて復讐したいと思うような感情を持てる人…で、小佐内ゆきはとても魅力的な女性でもあるけれど、それから減算したくなる点が多くてネガティブなキャラです。
これは作者の意図なのでしょうね。キャラの心情とか、愛情や友情というものよりも、ストーリーの中の謎解きを楽しむため。いや、キャラに感情移入しないこともあり、そういう場面を俯瞰しているようなイメージで読み進められます。
出ている謎自体も比較的簡単で、これ、ああいうことじゃないのかと思ってしまうものもいくつかあり、簡単かと言うとそんなこともなく、ドンデン返してもないのにあとで伏線と気づくようなパーツの組み合わせで「実はこんな裏がありました」との種明かしに唸る感じ。
『春期限定いちごタルト事件』から『夏期限定トロピカルパフェ事件』ときて『秋期限定栗きんとん事件』のあと、冬期限定…とくる高校3年生の冬休み(もう、高校3年になったキャラたちには期間的にそこしか残っていない)の4部作高校在学中で完結らしいので、残りも待ち遠しいところです。もう『秋期限定栗きんとん事件』からは10年も経つわけですが。

読後感

不思議です。お勧めするかと言われると、好き嫌いが分かれそうだし、面倒くさい話だからつまらないと言われるかも知れないので、「俺は好きだけれど、勧めることは考えてしまう」本です。
でも、読み返してしまうくらいで、とても魅力的。

このふたり(常悟朗とゆき)は、どうなんだろうなぁ、セックスレスな夫婦みたいな印象です。自分がそれを知っているわけではないから、イメージとして。抑止力と言うかフラストレーションのはけ口の機能はあるけれど取扱い注意で、でも、その注意が慎重にならなくてもできる相手というのか。
最終的に恋人同士になる大団円に進みそうな気がしないのは、ふたりがイチャイチャしてるシーンとか結婚して子供を育てる未来とか、ないだろうと感じてしまうから。お互いに代替する人が見つからないからそのまま継続なのでしょうか。
最後はゆきが常悟朗に復習をするストーリーというわけでもなさそうだし、いや、高校時代だけだと時間がないかな。常悟朗が恋人作って熱上げて小市民な恋に浮かれ上がって、置き去りにされたゆきが別れさせるという復讐に出るとかだったら、それはそれで面白いストーリーになりそうですけど。